【ツレが産後ウツになりまして】第6回:アタシにだけなつかない…妻が壊れる<後編>

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わが子が、妻にだけなつかない! 次々と押し寄せる育児のトラブルに、遂に妻が壊れた……。

前回(『アタシにだけなつかない…妻が壊れる<前編>』)「ねえ、コレ捨てていい?」というわが耳を疑う一言を発した妻。

自身の不妊治療奮闘記を綴った『俺たち妊活部』の著者・村橋ゴローが見た、最愛の妻が産後ウツになっていく……壮絶な産後育児をお伝えします。

 

「アタシ、もう限界です」

「ねえさあ、もうコレ、捨てていい?」

寝ぐずり泣き叫ぶ赤ちゃんを抱いた妻は、ベランダを見ながらそう吐き捨てた。

ちなみに、わが家はマンションの6階にある。

耳を疑った。

そして彼女が何を言ったのか理解したのと同時に、僕は両手で彼女の肩を強くつかむと、大きく揺すった。

「りえ!しっかりしろっ!!」

するとまるで憑き物が取れたかのように、ハッと真顔に戻った妻は、次第に全身を小刻みに揺らしながら嗚咽をあげた。びっくりした赤ちゃんは、火がついたようにさらに高く大きな声で泣き始めた。

そんなふたりを僕は強く抱きしめ、いつのまにか僕まで泣きはらしていた。

 

妻のSOS

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母乳問題、慢性的な便秘、顔に広がる真っ赤なブツブツ。くわえて、赤ちゃんが妻にだけなつかないという地獄。

想像してほしい。

3年に及ぶ不妊治療、2度の流産を乗り越え、41歳で妻は第一子を授かった。

その子が、妻が抱くたびに泣き叫ぶのだ。降りかかる様々なトラブルに飲み込まれ懸命にもがくも、なす術がなく途方に暮れる妻。

すべてが上手くいかず、ただ赤ちゃんが泣き続けるという現実。

 

「ねえさあ、もうコレ、捨てていい?」

 

これは妻のSOSなのだ。

 

「もうだめ、限界です」

「助けて、あなた」

 

妻はそれでも必死に赤ちゃんを愛し、すべてのお世話を懸命にこなしていた。

 

「アタシは母親なんだ」

「アタシは母親になるんだ」

彼女の努力をしっているから僕は、ふたりを抱きしめるしかなかった。

 

「りえちゃんは何も悪くない。よくやっているよ」

そう思い、ただふたりを抱いて3人で泣き続けるしかなかった。

 

泣き続けるわが娘へ母親からの言葉

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それから2~3時間は経っただろうか? 出かけていた義両親が帰ってきた。

彼らは、孫が娘にだけなついてないことを知っていた。赤ちゃんに背を向け布団の中で泣き続けるわが娘を見て察知したのか、オカンはゆっくりと、そしてやさしくわが娘に語りかけた。

「この子にとって、母親はあんたひとりだけなんだよ。何があっても、この子の母親はあんたしかいないんだよ」

翌日、義両親は田舎に帰った。朝イチ、赤ちゃんを連れて最寄り駅までお見送りへ。

「いろいろ、ありがとう」

この言葉に嘘はなかった。

そりゃあ嫌味もたくさん言われ、1ヶ月にも及ぶ共同生活は息が詰まるものだったけど、オトンとオカンがいなければ子どもの世話など僕らふたりにはできなかった。

オカンに感謝を告げると、

「もう父親なんですから、あんたがしっかりせにゃあ」

オカンはこの1ヶ月間見せてくれなかったやさしい笑顔で、僕にそう言ってくれた。

 

「かわいい、赤ちゃんかわいい」

その夜、久しぶりに親子3人となった僕らは川の字になり寝そべっていた。

妻は昨日のことを「ごめんね、ごめんね」と赤ちゃんに詫びていた。そして、とても柔らかい笑顔で「かわいい、赤ちゃんかわいい」と言いながら、何度も何度もその頬をなでていた。そしてボソッと、言葉を落とした。

 

「ねえ、赤ちゃん。あなたがいくらママのことを嫌っても、ママはあなたのことを抱きしめ続けるから。かわいい」

 

そうつぶやくと、彼女は目を真っ赤にはらした。

それは昨日までの悲しみのものではなく、母親にならんとする強い決意の表れのように見えた。それを見て、なぜか俺も泣けた。こうやって、小さな赤ちゃんによって、僕らは親にさせてもらっているのだ。

換気のため開けた窓から、心地よい風が吹き込んできた。

 

そのとき、メールの着信音が鳴った。見ると、大学病院の小児科の先生からだった。実は2週間前、顔の真っ赤なブツブツが気になっていたので、診てもらっていたのだ。画面を開く。

 

【お子さまの件ですが、アトピー性皮膚炎である可能性が高いと思われます】

 

穏やかな夜は、一瞬にして引き裂かれた。

次回、「アトピー性皮膚炎との闘い」をお届けします。

 

【参考・画像】

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※ 村橋ゴロー(2016)『俺たち妊活部』(主婦の友社)

 

※ 7713 Photography、 Tatyana Dzemileva、Africa Studio/ Shutterstock

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【著者略歴】

※ 村橋ゴロー・・・72年、東京都出身。大学生のときライターデビュー。以降、男性誌から女性誌、学年誌など幅広い分野で活躍。千原ジュニア、田村淳、タカアンドトシ、次長課長、高橋克典など多くの芸人、俳優陣の連載構成を手掛ける。3年に及ぶ、自身の不妊治療奮闘記をまとめた著作『俺たち妊活部』(主婦の友社刊)が好評を博す。また主な構成/著作に、『すなわち、便所は宇宙である』シリーズ(千原ジュニア著・扶桑社刊)、累計200万部突破した『GO!GO!バカ画像シリーズ』、『裏モテの秘策』(ともにKKベストセラーズ刊)などがある。結婚以来11年間、炊事・洗濯・掃除をこなす兼業主夫でもある。Twitter:@muragoro

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