2歳男児、知らんオッサンに恋をする #25

子どもの“好き”に付き合うと、見えてくるもの

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この連載で何度か触れたが、ウチの2歳8ヶ月になるグラ太は大の電車好きである。そのため毎週末は自転車で30分かけて、ミニSLに乗りに行くのが僕の仕事となっている。

かっこつけて“僕の仕事”なんて書きましたが、単にグラ太と遊ぶのが大好きなので、僕が連れ出してるだけです、はい。

さて、子どもの“好き”にとことん付き合うと、見えてくるものがある、ということが最近わかった。

ここ半年ほど毎週末は通っていて、最初の3~4ケ月は文字通りミニSLに乗ることがグラ太の目的だった。

毎週末出かけ、午前の運行が終わる昼の12時まで少なくとも4回は乗る。

40を過ぎたオッサンが周回3分のレールの上をぐるぐるぐるぐる回っていると、思春期を迎えた小僧じゃないが「俺はいつまで決められたレールの上を走らされるんだ!」と思いたくもなるが、横のチビがニッコニコしてるんだから、それはまあいい。

ついでに言えば、今年の花見はミニSLからしましたからね。ぐるぐるぐるぐる回っている最中、ふと空を見上げたら「あ、桜が咲いてる」って(笑)。ミニSLに乗って気づく、季節の移り変わり。これはけっこうなパパあるあるなのかもしれません。

そんなグラ太の“楽しみ方”に変化が起きたのが、ここ2カ月ほど。ミニSLに乗るというより、運転手さんたちへの憧れが強くなっていったのです。

勇ましく「出発進行!」と号令をかけ、大好きなミニSLを自在に操るその姿は、まさにグラ太のアイドル。そう、グラ太は2歳8か月にして、オッサンに恋をしたのです。

 

恋の効能とは?

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この恋は親にとっても効能があり、

「お野菜食べなさいって、運転手さんが言ってたよ!」

「お野菜食べないとミニSLに乗せないって、運転手さんが言ってたよ!」

とデタラメを言っても、「おやさい、たべるぅぅ!」と必死になってほうれん草を完食したのです。ここで僕は実感しました。「好き」はすべてのパワーの源であると。こうなったら、グラ太の「好き」にとことん付き合ってやろうと。

その翌週でした。

いつも通り、午前中にぐるぐるし倒し、ミニSLは1時間のお昼休みに。それまで乗っていた親子は、三々五々ランチへと出かけます。しかしグラ太は、プラットフォームから離れようとしません。

「グラ太、パパと一緒にご飯に行こう!」と声をかけても、「イヤだ」の一点張り。

「グラ太、しばらくミニSLは走らないから、ここにいたってムダだよ」と諭しても、聞く耳を持ちません。

するとグラ太は、ある方向にタッタッタッと走っていきました。そこは運転手さんたちのたまり。柵の向こうに大きなテーブルとパイプ椅子が並べられ、運転手たちがお昼ご飯を食べているところでした。

 

「ぱぱ~、ぼく、うんてんしゅさん、みる~~」

 

グラ太はそう叫ぶと、柵にしがみつき一歩も動かなくなったのです。

 

「えっ!? オッサンがメシ食ってるとこ、俺も見てなきゃいけないの?」

 

見ると、あるオッサンはカップラーメンにお湯を注いでいます。

 

「うわ~、あのオッサン、昼カップ麺かよ……」

 

何ごともバックヤードは、覗かないほうがよさそうです。

そして運転手たちも、明らかに狼狽しております。そりゃそうだ、よく知らん親子にメシ食うところを凝視されてるんですから、気が休まりません。

 

“どっか行ってくれよと願うオッサンたちVSこっちだってオッサンの食事風景なんか見たかねえよ、と思ってる親という名のオッサン”

 

こんな不毛な名勝負を、グラ太の雄たけびが切り裂きます。

 

「ぼく、おやさい、たべたよぉぉぉぉ!!!」

 

突然の報告に戸惑う運転手たち。「お野菜食べなきゃミニSLには乗せないぞ!」と言ってたはずの人間がカップ麺をすすってるのは理屈が合いませんが、とにかくグラ太は叫びます。

 

「ぼく、おやさい、たべたよぉぉぉ!!!」

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